シンガポール – と聞いて皆さんは何をイメージされるでしょうか。
国を代表する観光名所であるマーライオン像
建物の上に船が乗っかった形をしているマリーナベイ・サンズ
日本の安倍首相が国内カジノ解禁のための視察に行ったというカジノリゾート。
一人当たりGDPでは日本をも上回る東南アジア一、いや世界でも有数の経済大国
清潔な街そのものや、罰則の厳しさを思い浮かべる方もいることでしょう。
実はぼくも一時期住んでいたこともあるのですが、ぼくの持つシンガポールのイメージは、”合理的”です。
何事もルールが明確に定められ、効率的で無駄がない。
空港のイミグレや入出国管理、ビザの取得で訪れた役所の手続き等非常に効率的でスムーズだったのを覚えています。
そんな合理的で効率化を押し進めているシンガポール。当時はドローンは持っていなかったので今回改めて詳細を調べてみました。
実は今回シンガポールのドローン規制を敢えて記事にしようと思ったのは理由があります。それはドローンの規制を行っているシンガポール当局のサイトを見ていてその作りと説明がとても論理的でわかりやすいものであったこと。規制の背景についても理由付けをしながら言及していることから、この情報を共有することで読者のドローン規制に対する理解がより進むかもしれないと思ったからです。
ということで今回はシンガポールのドローン規制を担当している当局であるシンガポール民間航空庁CAAS(Civil Aviation Authority of Singapore)のサイトの構成に沿って紹介したいと思います。
かなりの長文記事になりますが、興味のある方はぜひ最後まで目を通してみてください。
ちなみにシンガポールのドローン規制についてのぼくの感想は、シンガポールはドローンにとても優しい国、です。そしてこれは海外からシンガポールにやってくる外国人に対しても当てはまります。
それでは見てみましょう。(以降、記事の見出しはCAASのサイトに沿う形で作成しています。実際のサイトもこの通りの順番で説明がされているということです。また情報は2015年6月15日時点の)最新更新情報に基づきます。)
無人航空機とは何か?
いいですね、この見出し。
まず用語の定義から入るところがコンサルタントの作るドキュメントみたいでこの後の論理的な説明を期待させてくれます。
さて、無人航空機とは何か?
UAV(Unmanned Aerial Vehicle)もしくはドローンと呼ばれ、パイロットが搭乗することなく操縦可能な航空機のことを指します。
なぜドローンを安全に飛行させることが重要なのか?
これもいいですね。トヨタのなぜなぜ5回にも匹敵する、そもそも安全に飛行させることが必要な理由を説くという姿勢。
みなさんはこの質問に答えることができますか?
シンガポールの説明はこうです。
シンガポールの密で込み合った空域と都市部の環境を鑑みるに、無人航空機の飛行は安全かつ責任を持った形で行われなければならない。仮に飛行が適切に行われなかった場合、無人航空機の操縦は航空の安全と公共の安全をリスクにさらすことになる。安全機能が搭載されている無人航空機も存在するが、機会の不具合、操縦シグナルの喪失やヒューマンエラーは発生し得、その場合操縦者は飛行中の無人航空機の制御を失うことになる。その結果として、無人航空機の有人航空機との衝突や他の無人航空機との衝突事故を起こしかねない。あるいは人や地上の建物に衝突し、怪我人や器物損害を引き起こす可能性さえある。無人航空機の操縦者は周囲に十分な注意を払いながら安全な飛行を保証する義務がある。
<原文:CAASのwebsiteより抜粋>
Given Singapore’s busy airspace and densely populated urban environment, the flying of unmanned aircraft must be carried out in a safe and responsible manner. If not carried out properly, the operation of unmanned aircraft may pose a risk to aviation and public safety. Despite the safety features in some unmanned aircraft, mechanical malfunction, loss of control link or human error could occur and cause operators to lose control of their aircraft in flight. This may result in the unmanned aircraft colliding with a manned aircraft or another unmanned aircraft, or hitting persons and property on the ground, potentially causing injury and damage. Operators should ensure that they are able to operate unmanned aircraft safely, exercising due care and concern for others.
こうやって文章にされると頭では何となくわかっていることがはっきりとした形となって、ドローンをなぜ安全に飛行させることが必要かを呼びかけてきます。
どうやったらドローンを安全に飛行させることができるのか?
さて、ここからがメインであるシンガポールのドローン規制です。
安全に飛行するためのガイドラインがやるべきこと(DOs)とやってはいけないこと(DONT’s)のカテゴリ別にイラスト付きで説明されていますので、これを基に見ていくことにしましょう。
このガイドラインは飛行許可を必要としない条件下でのレクリエーション目的での飛行時のガイドラインです。(下記に記載の通り、レクリエーション目的であれば空港近辺での飛行等の特別な場合を除いて許可は不要です。よってレクリエーション目的飛行全般のガイドラインと捉えてよいでしょう。)
まずはやるべきこと(DOs)からです。
やるべきこと(DOs)
1.機体の特徴と安全に飛行する方法を知ること
2.飛行前に周囲が安全であることを確認すること
3.機体がよく見える状態かつ良好な天候時に飛行すること
4.常に視界の範囲内で飛行すること
5.無人航空機の操縦機器がIDA(情報通信開発庁)の要求を遵守していること
6. 人や建物や他の航空機(有人、無人問わず)から十分な距離を保って飛行すること
続いてやってはいけないことです。
やってはいけない(DON’Ts)
1.人混み上空では飛行させないこと
2.機体総重量が7Kg以上の無人航空機は飛行させてはいけない
3.いかなる物体も機体から吊るしたり、運んだり、機体に取り付けてはならない(物体をつかめる状態にある場合を除く)
4.有害物質を運んで飛行してはいけない
5.無人航空機機体からいかなる物質も落下させたり、放出してはならない
6.救急車等緊急を要するサービスを妨げる場所での飛行は禁止。移動中の車両上空はドライバーに危害を加えたり注意をそらす可能性があるため飛行禁止
7.セキュリティ上の重要地域を含む、規制エリア、禁止エリア、危険エリアの域内または上空での飛行は禁止
8.空港と軍事基地から5Km以内は飛行禁止。200フィート(約61メートル)以上の飛行は禁止。
ここまで安全飛行のためのガイドラインを見てきました。どの項目も他の国と同様の規制内容となっていますが、飛行高度が200フィート(約61メートル)に限定されているのがシンガポールの特徴でしょうか。他の国だと120-150メートルまで許可されていることが一般的なので、それらと比較すると低い高度までしか飛ばせないことになります。
ただしもっともパイロットにとってありがたいのが、上記を守って飛行するのであれば飛行許可の取得は要らないということでしょう。他の国の規制を見ていると、”XXX機関からの飛行許可を有していること”という項目が飛行の条件になっていることも珍しくなく、これがパイロットにとってのネックとなるのです。(日本の都市部と同じですね。東京周辺なんか許可なしで飛ばせるところはほとんどありません。)
小さい国でかつあれだけ高層ビルが立ち並んでいる国で、この規制内容というのはドローンにやさしい国と言えます。
ドローン飛行のための許可はいつ、どのような時に必要なのか?
ここまで読んだ方はすでにシンガポールにドローンを持って行く気になっているかもしれません。そんな時に気になるのが現地で必要な許可の取得。
でもご安心ください。
上記でも述べたようにシンガポールでは条件によっては許可の取得は不要なのです。
この章ではいつどのようなときに許可が必要になるのかを見ていきたいと思います。
注:以下の表はCAASのサイト記載のものを筆者にて日本語訳、加筆したものです。
こうして見てみると、飛行の目的と機体の重量によって許可の要不要がきちんと無駄なくダブりなく整理されているのです。
そして商用利用に該当する活動は何か、リサーチとはどういう活動内容を指すのかの定義もしっかりと明記されています。このあたりさすがシンガポールという印象です。
さて、これによるとレクリエーション目的であればほとんどの場合許可は不要となることがわかると思います。
複数あるドローン許可の種類の違いは何か?
上記の表の中にいくつか許可についての記述があります。それらの違いについても説明がされています。
大きく3つの許可の種類が存在します。(カッコ内は原語での表現です。)
1. 操縦者許可(Operator Permit)
操縦者許可証は申請者が無人航空機の安全運行を保証できる場合にCAASから申請者に対して発行される。この際、申請者の所属組織ならびに申請者の無人航空機飛行に関する適正、安全リスク評価を含む安全管理の手順についての適正、無人航空機の耐空性が考慮される。
当許可は発行から1年間有効となる。
2. 飛行内容許可(Activity Permit)
飛行内容許可は無人航空機を使用して行われる一つの飛行活動または一連の繰り返される飛行活動に対して、飛行が行われる特定の地域と飛行活動の内容、条件の元CAASから発行される。
3. その他許可(Other Permit)
その他許可は無人航空機飛行活動の特定の側面に対して様々な機関から要求される許可である。例として空撮と/またはセキュリティ上の重要地域上空飛行の場合はシンガポール警察(SPF)の許可が必要になり、無線周波数の使用についてはIDAの許可が必要となる。
ぼくも世界各国のドローン規制をいろいろと調べていますが、特に1のパイロットの許可に関しては、許可の取得の条件が記載されていなく、どのような評価基準で許可が承認されるのかがあいまいなケースが多いです。
それに比べるとシンガポールの場合、評価基準がクリアに言及されているため、申請者側としても自分のどのようなスキルをどういうように証明すべきかが判断しやすいと思います。
どうやってドローンの許可を申請するのか?
許可の申請は下記のURLから可能です。このあたりも効率化のシンガポールの神髄です。他の先進国に引けをとりませんね。
http://www.caas.gov.sg/caas/en/eServices_Forms/Application_for_Aerial_Activities
特筆すべきは申請から許可発行までの想定リードタイムまで記載されていることです。
CAASのサイトによると申請から許可発行までは2週間となっています。申請内容が簡単なケースやすでに操縦者許可を取得済みの申請者による新規の飛行内容許可が申請された場合はこれよりも短くなるとのこと。
これとは反対に申請内容が複雑なものでCAASや他の機関によるより詳細な評価が必要となる場合はこれよりも長い期間での発行となります。申請は1件1件、申請内容に基づいてCAASと情報通信開発庁(IDA)やシンガポール警察(SPF)、シンガポール空軍(RSAF)などの関連機関と連携して審査されるとも言及しています。
このあたり審査にあたる機関が公開されているのも審査の透明性の確保の観点からはとても好ましいものと言えます。申請はケースバイケースで審査されると明確に言及しているので、きちんと内容をレビューした上で許可を発行していることが伺えます。
いかがでしたでしょうか。長文にも関わらず最後までお読みいただきありがとうございます。
“どうやったらドローンを安全に飛行させることができるのか?”の章の最後でシンガポールはドローンにやさしい国と述べたように、海外でドローンを飛ばしてみたいという人にとってもシンガポールは一番敷居が低い国なのではという印象を持ちました。
それは今まで見て来たようにルールがとても簡潔でかつわかりやすい、何がOKで何がNGかがとても明確に示されているからです。
現在ドローン規制がすでに敷かれている国、今後規制を開始しようとしている国のどちらにも、こうした明確な規制を簡潔に示してくれることを願ってやみません。(イラスト付きで説明してくれるのが一番誤解を生まずにわかりやすいんですよね。)
<Source>
http://www.caas.gov.sg/caas/en/ANS/unmanned-aircraft.html
http://www.straitstimes.com/singapore/drone-laws-in-singapore
http://www.straitstimes.com/singapore/singapore-to-introduce-drone-law-5-things-about-these-flying-machines
クリックしてAdvisory_Safe_Responsible_Operation_UnmannedAircraft.pdfにアクセス
申請無しでのドローンの飛行は駄目なのですか?
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駄目ではないですよ。一定条件下での飛行であれば申請不要です。
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ありがとうございます。初めての海外ドローン飛行ですので、不安でいっぱいです。良い動画が取れる様に頑張ります。
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