【海外ドローン規制】アメリカFAA レクリエーション目的ドローン飛行の規制変更 機体の登録は不要に

ここのところアメリカのドローン事例紹介が続いていますが、今回もアメリカです。

少し日を遡ること5月19日、アメリカのドローン業界、それもホビー用途飛行に関わる大きな変更が発表されました。

 

内容を要約してお伝えするとともに、今後予想される動きについて意見を述べたいと思います。

注:この発表を理解する前提として、アメリカでは機体重量が0.55ポンド(およそ0.24Kg)を超える全てのドローンは、レクリエーション目的(ホビー目的とも呼ばれる、いわゆる趣味として飛ばすドローン飛行)、商業飛行の区別なしに、FAA(米連邦航空局)に機体を登録する義務があり、この規制を遵守できない場合、罰金や禁固刑を課される可能性がある、ということを知っておく必要があります。

 

アナウンスの概要

アメリカ連邦控訴裁判所は5月19日、レクリエーション目的でドローンを飛行する者に対してドローンの登録を義務付ける規制(2015年12月に制定)が無効であるとの判断結果を示しました。

 

何が問題だったのか?

2015年12月に制定されたこの規制の何が問題だったのでしょうか?

実はこのドローン登録を義務付ける規制が、2012年に制定された”モデル航空機”のための別の規制と矛盾するというのです。

この”モデル航空機”のための規制では、FAAはモデル航空機を規制する権限を有さないと定めているのです。そして控訴裁判所はドローンを”モデル航空機”として分類しています。

要するに、モデル航空機として分類される趣味目的のドローンに対して、登録を義務付けるというのは、FAAの権限配下にないから無効だ、という判断を下したのです。

控訴裁判所は、ワシントンD.C出身のドローン愛好家John Taylor氏の側に立って、次のように述べています。

“ドローン機体の登録ルールは、”モデル航空機”に適用している時点で違法である。”

 

FAAのリアクション

この判決を受けて、FAAはどう反応しているのでしょうか?

同日5月19日に発表されたFAAのコメントでは、次のアクションに進む前に、判決の内容を吟味する。可能性としては、議会に対して2012年に制定されたモデル航空機のための規制を修正するよう求めることだ。

と反応を示しています。

一方の裁判所は、”もちろん議会は2012年に制定されたモデル航空機のための規制を修正することができる。ひょっとすると議会はそうすべきなのかもしれないし、そうすべきでないのかもしれない。いずれにしても、我々は定められた法に従う必要がある。”と述べています。

 

第3者の意見

この判決を受けて、モデル航空機の促進を目的として活動する非営利組織Academy of Model Aeronautics (AMA)の代表Rich Hanson氏は以下の見解を発表しました。

“連邦法はこのような”おもちゃ”を対象とするような低い敷居の話に適用すべきではない。過去数十年に渡ってAMAのメンバーはAMAに対して自主的に機体の登録を行い、コミュニティの安全ルールに従ってきた。我々はレクリエーションコミュニティを管理するには、このようにコミュニティベースの規則の方が連邦政府の定めた規則よりはるかにうまく行くと信じている。”

一方同じ非営利組織であるThe Association for Unmanned Vehicle Systems Internationalは、控訴裁判所の判決に反対する形で以下のコメントを発表。

“連邦政府による登録システムは空の安全に対するユーザの責任を理解させ、広めるために重要である。有人航空機、無人航空機双方の航空コミュニティ全般に渡る責任を保証するために、我々は議会とともに法的解決策を探って行く。

さらに中国に本拠地を置く最大のドローンメーカーDJIは次のようにFAAの立場を擁護する姿勢を示しています。

“FAAの制定したドローン登録義務化という革新的なシステム取り組みは非常に合理的な仕組みであり、ドローンパイロットに対して責任と教育を与えるものだ。この問題は法律を作る側とドローン業界の協働により解決されることを期待する。”

 

何がどう変わるのか?

今回の控訴裁判所の判決により、レクリエーション目的でのドローン機体の登録義務はその法律的効力を失ったため、今後登録は必須ではなくなります。

しかしながら冒頭にも記載したように、商業ドローン飛行に対しては従来通り機体の登録義務付け並びにライセンスの取得が求められることは変わりありません。

 

 

 

万が一の事態への備えは万全か?

ドローン自体が近年急速に発展したテクノロジーだけあって、ドローンについての法の整備が追いついていないのは世界共通の事実です。そのためこのような法律上の矛盾や穴が見つかるということは決して不思議ではありません。

今回の判決により、レクリエーション目的のドローンの登録は不要という結論になりましたが、我々ドローン業界に関わる者は、そもそも何のために機体の登録を義務付けたのかという、その目的を理解しなければなりません。

私は、ドローンの登録を義務付けると言うのは、万が一の事故が発生した時に、その機体は誰が所有しているものなのか、どう言う目的で所有されているものなのか、ドローンパイロットの責任の所在を明確化するとともに、ドローンを有するまたは飛行する一人一人に安全性やリスクを教育するために非常に有用な手段だと考えています。

FAAも同様の考えに基づいて機体登録義務化のルールを制定したと考えられるため、今回の判決を受けて、再度機体の登録を義務付けられるように関連する法案の見直しを検討する方向で議論が進んで行くことが予想されます。

この際、近年急激に増加しつつあるドローンと空港・航空機とのニアミス事件に対して規制当局としてどう対策を取って行くかを合わせて検討しなければならないことは言うまでもありません。

 

 

皆さんはどう考えますか?

 

<Reference>
http://fortune.com/2017/05/19/drone-faa-registration-appeals-hobbyist/
http://www.popsci.com/court-overturns-rule-requiring-drone-registration#page-4

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