今回はタイのドローン規制にまつわるぼく個人が体験したエピソードを紹介しましょう。
ある日家のそばのスクンビット通り(バンコクのメイン通り)を歩いていたところ、歩道からDJI Mavicを飛ばそうとしている外国人グループを見かけました。
Mavicの電源はすでに入っており、今まさに飛び立とうという状態でした。すぐ近くにはBTS(バンコク都心部を走る高架鉄道)が通っています。
すかさず声をかけました。
ぼく: このエリアはドローン飛行禁止エリアですよ。許可(Permission)は持っていますか?
男: ライセンス(Licence)を持ってるよ。
ぼく: 都心部での飛行許可(Permission)ですか?
男: ライセンス(Licence)を持っていれば大丈夫だよ。
(この会話分の括弧内の英単語は実際の会話において、ぼくと男が使用した単語をそのまま記載しています。)
男はそういってMavicを離陸させました。
男の言うライセンス(Licence)が都心部での飛行許可なのかどうか不明でしたが、ぼくはこの後、この男たちをその場に残して立ち去りました。
幸い、その直後に大雨が降り始めた(なんという偶然!)ので、おそらく男はドローン飛行を中止せざるを得なかったことでしょう。
おさらい
さて、このエピソードいったい何が問題だったのでしょうか?
少しおさらいをしてみましょう。
まずタイではドローン飛行を行うにあたりライセンスの取得が必須です。
このライセンスというのはタイ王国民間航空当局であるCAAT(Civil Aviation Authorization of Thailand)により発行・付与されます。
このライセンス、ドローン飛行をするための”最低条件”となる”免許”です。これをもっている人は一定の飛行スキルと知識を有しているとみなされるわけです。
では、このライセンスを持っていればどこでもドローンを飛ばせるのか?
答えはNo(ノー)です。
少し考えてみましょう。
一定の飛行スキルと知識を兼ね備えた人であれば空港の近くでドローンを飛ばしていいのでしょうか?
違いますよね?
というようにライセンスを持っていたとしても飛行できる場所とできない場所は明確に区別されており、もし飛行できない場所での飛行を希望する場合は、別途管轄組織などから”許可”を取得する必要があるのです。これが許可(パミッション)と呼ばれるものです。
自動車を例に取ってみるとわかりやすいでしょう。
まず日本国内で自動車を運転するには運転免許の取得が必要です。これは自動車を運転するための最低条件となる免許です。
ではこの運転免許を持っていればどこでも自動車を運転してよいのでしょうか?
たとえば自動車運転免許を持っていればどこかの大邸宅の敷地内(私有地)を走ってよいのでしょうか。空港のゲートを潜り抜けて滑走路を走ることはできるのでしょうか?
違いますよね。
さて、冒頭のエピソードに戻りましょう。
ぼく: 都心部での飛行許可(Permission)ですか?
男: ライセンス(Licence)を持っていれば大丈夫だよ。
ぼくの問いかけに対して、男はライセンスを持っていれば大丈夫だよ。と回答しましたが、これは実は大いなる間違い・勘違いなのです。
タイのドローン法規制によると、たとえライセンスを持っていたとしても、都市部上空での飛行は禁じられているのです。
以下引用すると、
(b) must not fly into restricted area, limited area and dangerous area
announced in Aeronautical Information Publication – Thailand or AIP-Thailand and also at government buildings and hospitals unless permission is given.;( i) must not fly over cities, villages, communities or areas where people are
gathered;
というように都市部上空での飛行を禁じる旨が明確に記載されています。
これらの詳細については以下の関連記事を参照してください。
<関連記事>
【海外ドローン規制】タイ王国ドローン法規制全文英語版がついにリリース!!
【海外ドローン規制】タイのドローン法規制(詳細編) 非公式日本語訳PDF付き
もちろん、上記エピソードで男がライセンス(Licence)という言葉を許可(Permission)の意味で使用していたという可能性もなくはありませんが、”ライセンス”と”(飛行)許可”は今回紹介したタイのエピソードのように異なる意味を持つことがあるので、注意が必要です。
これはドローン飛行にあたりライセンスの取得が必要な他国でも当てはまります。
タイでドローンを飛行する際はくれぐれもこのライセンスと許可という言葉を混同しないように注意してください。