<2017年12月4日更新>
日本ではエアロエントリーという会社が「全世界対象」のドローン保険を始めているとの情報を読者の方からいただきました。
エアロエントリー社は日本でDJI製品を購入すると付帯される一年間の無償ドローン保険を扱っている企業です。
当社が提供しているDJIドローン賠償保険、DJI機体保険の「プランC」に加入すると国内で管理しているドローンを一時的に海外に持ち出した場合にも補償対象となります。ただし”一時的に”とあることから、旅行保険のように滞在期間の制限がある可能性があります。その点はご自身でご確認をお願いします。
その他、他の国でも海外対象のドローン保険を扱っているという情報をお持ちの方は共有いただければ幸いです。
最近とある保険会社の方とドローン事情についてやり取りする機会があるのですが、その中で思いついたアイデアがありましたので、今日はそのアイデアについて思いつくままに描いてみたいと思います。
そのアイデアとは、
海外ドローン保険。
ご存知の通り、ドローン保険というのは申し込みをしたその国内のみが保険の適用対象となり、国外での事故は補償の対象外です。日本のドローン保険は日本国内のみが補償対象。ぼくが住んでいるタイのドローン保険はタイ国内のみが補償対象です。ぼくが知る限り国外補償のドローン保険は存在しません。皆さんも今一度ご自身のドローン保険の保険証書を見てみてください。
国外での補償も有したドローン保険、それが海外ドローン保険の定義です。
ドローンの商業利用、特に映画やテレビ向けの空撮映像を取り扱う企業では国外撮影の需要もそれなりにあると考えられ、そうした企業向けの海外ドローン保険はある程度の需要があると思われます。
ですが、海外ドローン保険サービスを提供するには解決しなければならない課題があるのです。
国外補償を阻む課題
1.ドローン規制
解決しなければならない課題の一つがドローン規制です。
当ブログの読者の方はよくご存知だと思いますが、ドローンの規制は各国さまざま。タイのようにライセンス取得が義務付けられている国もありますし、日本のように特にライセンスなしでも飛ばせる国もあります。
事情のよくわからない国外のドローン規制配下での保険金支払いをコミットするというのは、保険会社にとってはリスクです。
一つ例を考えてみましょう。
Aさんは自国日本でドローン保険を申し込みました。その保険には国外補償もついていました。AさんはX国を訪れドローンを飛ばしていた最中に墜落させてしまいます。すぐさま日本の保険会社に連絡。事故現場の検証のため現地のパートナー企業の調査員が調査に訪れました。いくつかの書類を記入したAさんは破損したドローンを持って日本に帰国。
ところが後日保険会社から電話があり、Aさんがドローンを飛ばしていた場所は規制区域でドローン飛行が禁止されていた場所のため、保険を支払うことができないとの連絡を受けたのです。
破損したドローンを前に途方にくれるAさん。保険が下りないのであれば仕方ありません。やむなく新品のドローンを購入することにしました。
いかがでしょうか。
実際に海外ドローン保険を提供したらありそうな事例ですね。
この場合、Aさんがドローンを飛ばしていた場所が飛行禁止区域だったということで、保険会社は保険金の支払いを拒んだわけですが、Aさんのドローン飛行は違法行為に該当するわけですから、保険金が支払われないのも納得できます。速度超過で事故を起こした自動車に対して保険金が支払われない(もしくは過失者負担が発生する)のと似ていますね。
このように事情のよくわからない国での保険金支払いをコミットするというのは保険会社にとっては面倒でかつリスクもあることなのです。
2. 保険業務規制
2つ目の保険業務規制については、そもそもドローン保険を提供する保険会社が第3国での保険業法や個人情報保護法などの規制をクリアして保険業務の許可を取得していないために保険サービスを提供できないという壁もあります。保険を提供するというのは現地で事故が発生した場合に調査員を派遣して現場の状況を調査するといった活動ができるサービスネットワークも有している必要があるのです。
課題に対する対応策
では上記の課題に対する対応策としてはどういったものが考えられるでしょうか。
一つには現地の保険会社とのパートナーシップの締結です。
現地のドローン規制に精通した保険会社と組むことで、現地で事故があった時の調査をはじめ、保険金の支払いまでのプロセスをスムーズに行うことができます。パートナー企業が現地にあることで、その国での保険業務許可の取得も行いやすくなるでしょう。
大手の保険会社のように、世界各国に現地法人を有している企業であれば、各国の現地法人が連携することで、それぞれの国でのドローンを保険を組み合わせてパッケージとして提供することも可能です。
前例のAさんのケースであれば日本とX国双方でのドローン保険が必要となるわけですが、仮にこの保険会社が両国でドローン保険を提供している場合は、日本のドローン保険とX国でのドローン保険を組み合わせた保険商品を出発地である日本で提供することができれば、利用者にとっては非常に価値のある商品です。日本にいる間に全ての手続きが終了してしまうわけですから。
ビジネスの可能性
以上見てきたように、各国現地法人同士の連携や現地企業とのパートナーシップにより海外でドローン保険を提供する可能性は十分にあると言えます。
タイでドローン保険を提供しているのはMittare Insuranceというタイのローカル保険会社。現在のところ、タイ国外の保険ビジネスは行なっていないように見受けられます。(もしかしたらパートナー企業はあるのかもしれませんが。)
タイのドローン保険はタイ国内のみが保険適用対象。この壁があるからこそ、現在のところ海外補償がついたドローン保険がないのだと思います。
ぼくは以前からどこかの保険会社がタイ以外の国も補償できるドローン保険を提供してくれないか密かに願っていました。
もしどこかの保険会社の担当の方がこの記事を読んでくれていたらアドバイスいただければ幸いです。