タイのドローン規制 CAATライセンスとNBTC登録の違い

2017年10月から新しく施行となったタイの新しいドローン登録規制。

タイ国内でドローンを所有する全ての人は保有する全てのドローンをNBTC(National Broadcasting and Telecommunications Commission)に登録しなければいけなくなりました。

この新しい規制、もともとあったライセンス制度の後に新設されたこともあって非常に混乱を招くものとなっています。

「NBTCへドローン登録が必要になったって聞いたけど、じゃあCAATからのライセンス取得は不要ってこと?」

「CAATのライセンス持っている人ももう一回NBTCヘもドローン登録しなければいけないの?」

といった疑問を抱く方も少なくないでしょう。

この記事ではCAATのライセンスとNBTCへの登録では何が違うのか、一体何をすれば良いのかを説明したいと思います。

 

CAATライセンスとNBTCヘの登録はどう違うのか?

このブログの読者の方であれば、タイではドローン飛行にあたりライセンス取得が必須であるということはすでにご存知かと思います。

このライセンスはタイの民間航空当局であるCAAT(Civil Aviation Authority of Thailand)という交通省配下の組織が発行権限を有しています。

CAATのライセンスは自動車に例えると運転免許です。運転免許なしでは自動車を運転してはいけないのと同じように、CAATのライセンスなしにタイ国内でドローンを飛行することはできません。

ライセンス取得の際には、タイでドローン保険に加入していることや、申請書類を基に身元確認(犯罪履歴、入国拒否の履歴など)が行われ、問題ないと判断された場合に発行されます。申請書類の中にはドローンの飛行スキルを説明する項目もあります。(実技試験はありません。)

一方のNBTCへの登録は車に例えるなら自動車登録と同じ。日本であれば国土交通省配下の運輸局に自動車を登録する必要があるのと同様に、ドローンの機体をタイ政府に登録するという意味を持ちます。しかしこの登録はあくまで登録したに過ぎないので、ドローンを飛ばして良いということにはなりません。自動車は運輸局に登録されているけど、運転免許は持っていませんという状態と同じです。

以上、まとめるとCAATのライセンスはドローン飛行の免許。NBTCの登録はただの機体の政府への登録、です。

 

CAATライセンス保有者はNBTC登録必要なのか?

これがもっとも混乱する点の一つでしょう。ぼく自身がそうでした。

2017年の10月、ぼくがこのNBTC登録制度のニュースを初めて見たとき、ぼくはすでにCAATのライセンスを保有していました。ライセンス申請時にはドローンの機体の情報や写真も提出する必要があるため、すでにぼくのドローンの情報はCAATを通じてタイ政府に登録されているのです。

「ライセンス取得時にドローン登録されているのだけれど、また新たに必要なのだろうか?」

知り合いのタイ人ドローンパイロットに聞いたところ、すでにCAATライセンスを持っていればNBTC登録は不要とのことですが、一方でインターネット上にはライセンスの有無に関わらず、NBTC登録が必要といった情報もあり、皆混乱しているようでした。

ではCAATのライセンス保有者はNBTCヘの登録が必要なのでしょうか?

答えはNoです。

ぼくがNBTC登録をしに行った時にNBTCオフィスの担当者にCAATライセンスを見せたのです。

すると担当者はぼくのライセンスを見て、

「CAATライセンスを持っているならここに来る必要はないよ。君のドローンの情報はもう登録されているから」

と明言したのです。

これで今までずっとモヤモヤしていたものがはっきりしました。ぼくが当初予想した、ライセンス取得時にドローン情報はすでに登録しているのだから、NBTC登録は不要という考えは当たっていたのです。

 

まとめましょう。

CAATライセンスをすでに持っている。->NBTCヘの登録は不要です。

CAATライセンスを持っていない。->NBTCへの登録が必要です。CAATライセンス取得(別プロセス)も必要です。

NBTCは2018年1月末までに全てのドローンは登録されなければならない、違反者には最長5年間の禁固刑と10万バーツ(およそ30万円)の罰金が課されるとアナウンスしています。こう宣言されているので登録せざるを得ないのですが、もしこの制約がなければ、どうせタイでドローンを飛ばすのにはライセンスが必要なのですから、NBTCヘの登録はせずにCAATのライセンス申請だけするというのがぼくのおすすめです。わざわざ重複したプロセスを踏む必要はありません。

 

なぜNBTCの登録が必要になったのか?

さて、素朴な疑問です。

なんでNBTCヘの登録なんていうものが必要になったのでしょうか? 今まで通りCAATのライセンスを取得させればその過程でドローン情報も登録できるのだから問題ないのでは?というのがぼくがずっと抱いていた疑問でした。

ぼくはNBTCへ3つのドローンを登録しに行ったのですが、その時

「なんで君は3つもドローンを持っているの?」

と登録受付担当者に聞かれ、奥からちょっと偉そうな身分の人も出てきました。ちょっと怪しまれたのでしょうね。

そこはぼくもタイでドローンを広める信念を持って活動していますから、ドローン伝道師としてのコメントで切り返し、特に問題はありませんでした。

この時奥から出てきたちょっと偉そうな身分の人というのが、話してみると気さくな人で、なんと昔上智大学の修士課程に留学していたとか。簡単な日本語で挨拶もしてくれました。

「日本はドローンライセンスとかあるの?」

「どこでも飛ばしていいの?」

と日本のドローン事情にも興味津々です。

「ライセンス制度はないけど、東京とか大都市では飛行前に政府機関からの許可取得が必要だよ。」

などなどドローン談義に花を咲かせていました。

ちょうど良い機会だと思ったので、今まで思っていた疑問を率直にぶつけてみました。

「なんでこのNBTCへの登録制度が始まったの?」

すると、

「去年あった事件を知ってる?タイ航空のパイロットが飛行中に滑走路近くでドローンを見かけたんだよ。あとは最近テロリストがドローンを使って爆弾落としたりといった事件も増えている。だから我々が入ることにしたんだ。」

この方が紹介してくれた二つのエピソード、空港周辺でのドローン目撃とテロへの悪用は世界中で懸念となっている事実です。

これらがトリガーとなってタイ政府にアクションを取らせたというのも一つの側面でしょう。

しかしぼくは同時にタイ政府内の組織間の壁や連携のなさもこの新しい登録制度を生んだ側面の一つとして捉えています。

前述したように、皆がCAATのライセンスを取得すれば、その過程でドローン情報は収集され、登録も完了するので目的は達成できるはずなのです。にも関わらず、CAATの別の組織がこうした登録制度を始めるというのは同じ政府組織内での横連携のなさ、組織間の壁を感じざるを得ません。

NBTCとして上記のような世界的な傾向に基づく懸念があるので、CAATだけに任せていたらチンタラしていて、埒が明かない(CAATのライセンス取得は3ヶ月以上かかることはザラです。)。彼らに任せるのではなく、俺らだけでとりあえず全ドローンを登録させよう、という構図も読み取れるのです。

いちユーザから見れば同じ政府組織なんだから、それぞれ連携して書類の共通化や申請内容を内部で回すなどしてライセンス一本にしてしまえば良いと考えるのが当然です。

でもそれができないのが今のこの国の状況なのです。

このなんとも効率の悪い仕組み、プロセスはこの先数年間は続くと思われます。いつかどこかでCAATの職員とこのあたりの問題と解決策について議論をしたいと考えていますが、それまでは大人しく従うしかなさそうです。

 

<Reference>
http://www.richardbarrow.com/2017/10/how-to-register-your-drone-in-thailand/

タイのドローン規制 CAATライセンスとNBTC登録の違い” への3件のフィードバック

追加

  1. CAATとNBTCの件、とても分かりやすかったです。Y有り難う御座います。
    ところで複数のドローンがある場合、CAATのライセンスがあれば機体毎にCAATのライセンスを取る必要は無い(運転免許のように)のでしょうか。それとも機体毎にNBTCへの登録だけでなくCAATのライセンスを取り直さないといけないのでしょうか。私はCAATのライセンスおよび機体の登録を行っているのですが、これがドローンを増やす際にNBTCへの登録だけであれば便利だな、と思った次第です。もしご存じでしたら教えて頂けないでしょうか。

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